クリスマス・ストーリー [うたかた]
その娘は、待っていた。
もう何年になるだろう。
お願いしていることは、いつも同じ。
そして、返事もいつも同じ。
いつまで待てば、よいのだろう。
でも、今年もお願いする。
いつもと同じように。
「サンタさんの、お嫁さんにしてください」と。
そして思う。
今年の返事も、
「君が大人になるまで・・・」
なんだろうな。
そんな気持ちで、今年もクリスマスを迎えた。
その娘は目覚めた。
複雑な気持ちで。
でも・・・
何かが違っていた。
いつもとおんなじ朝なのに・・・
朝日の向こうに、見知らぬ人がいた。
しかし、それが誰だかすぐにわかった。
そう、
間違いない。
あの人に間違いない。
彼は、サンタクロースだ。
長い間、待ちつづけたサンタクロースだ。
彼のもとに、走っていった。
朝日のせいでよく見えない彼の顔を、
もっとハッキリ見るために。
そして、彼をしっかりと抱きしめるために。
でも、なぜだか彼の顔がよく見えない。
こんなに近くにいるのに。
こんなにしっかり、抱きしめているのに。
なぜなら、その娘の瞳から、
ながれている涙が止まらないから。
願いが、かなった。
これからは、彼といつも一緒。
二人で見つめあい。
二人で語り合い。
二人で愛し合う。
幸せな時が待っている。
その娘は、とても幸せだった。
1年後の、クリスマスが来るまでは・・・
今夜は、彼と二人で過す、初めてのクリスマス。
今まで夢見ていた、一番ステキな夜。
そう思っていた。
今も、そう思っている。
でも、彼はサンタクロース。
クリスマスの夜には、ここにはいない。
みんなの夢を、配り歩いている。
そう、悲しいわけではない。
ちょっと、悔しいだけ。
その娘は、思った。
そうだ、来年のクリスマスは、私も彼と一緒に、みんなに夢と希望を配り歩こう。
そうすれば、彼のそばに、ずっと一緒にいられる。
その娘は、来年のクリスマスを夢見て、微笑んでいた。
そして、早く彼が帰ってくるよう、祈っていた。
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